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【対談後編】食事で睡眠の質が変化する?「食事と睡眠」 -鈴木いづみさん(管理栄養士)×大塚慶輔さん(フィジカルコーチ)対談-

私たちの生活と“睡眠”との関わりを探っていくインタビューコーナー。今回は管理栄養士の鈴木いづみさんとフィジカルコーチの大塚慶輔さんとの対談です。「食事と睡眠」をテーマにはじまった本対談、前編は現代における食環境について伺いました。後編の今回は、気になる睡眠による効果について伺いたいと思います。
 

インタビュー前編はこちら

【鈴木いづみ(すずきいづみ)氏 プロフィール】
女子栄養大学卒業後、明治製菓㈱ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ明治へ入社し、トップアスリートの栄養サポートを担当。その後、宇都宮文星短期大学地域総合文化学科准教授を経て、現在は順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員として、スポーツ栄養学の研究を行っている。
また、公認スポーツ栄養士としてスポーツチーム・スポーツ選手の栄養サポートを行なっており、2012年ロンドン五輪に向けては競泳(400m個人メドレー)銅メダリストの萩野公介選手の栄養サポートを担当。 現在はJリーグ北海道コンサドーレ札幌の管理栄養士を務める。

【大塚慶輔(おおつかけいすけ)氏 プロフィール】
1977年6月2日北海道生まれ。数々のプロサッカーチームのフィジカルコーチを経験し、現在は大宮アルディージャ所属。2017年に株式会社ライフパフォーマンスを設立。“トップアスリートのコンディショニングをすべての人に”をコンセプトに、フィジカルコーチとしてのノウハウを生かし、アスリートだけでなくビジネスパーソンにもトレーニングやライフスタイルの指導・サポートを行なっている。
<指導歴>
アルビレックス新潟、ジェフユナイテッド千葉、モンテディオ山形、FC町田ゼルビアのフィジカルコーチを経て、2018年より大宮アルディージャのフィジカルコーチに就任。

いいものを食べても寝ないと意味がない?

前回は情報や食品が溢れる現代で「何を選択して食べるか」というお話が中心でした。それら食べたものはいつから自分の身体のものになるのでしょう。

鈴木さん

それが寝ている時なんですね。いくら一流のものを食べていても、一流のトレーニングをしていても、三流の眠り方をしていたら意味がありません。

“一流の眠り方”とは、このコーナーでもよくでてくる「質の良い睡眠」ということですね。

大塚さん

そうですね。よく、睡眠と学力、つまり脳の関係性が取り上げられていますよね。睡眠の質と学力が比例するように、睡眠の質と身体の質も比例しています。もちろん、バランスの取れた食事ができていることが大前提であります。

鈴木さん

アスリートに代表されるような「いい状態を長く保たないといけない人たち」は、「24時間でその疲労をいかにリカバリーできたか」ということが特に大事になってきます。それが栄養だったり睡眠だったりするので、ちゃんと戻すということにこだわることもプロの仕事です。

大塚さん

一般の方もそうだと思いますが、睡眠やちょっとした仮眠に充てたい時間を蔑ろにして、他のことに充ててしまっている。家族や周囲の理解、意識や環境を変えることが必要になるかもしれませんが、回復することに意識を持ってこだわれる人はやはりパフォーマンスが違いますね。

鈴木さん

そうだと思います。何事もその積み重ねですね。凡事徹底です!

寝ている間に起こっていること

睡眠前に向き不向きのある食べ物などはあるのでしょうか。

鈴木さん

食べ物の良し悪しは一概に言い切ることが難しいですが、状態が大切です。どんな状態かというと「消化活動を終えた状態」です。寝ている間に消化管が働いている状態だと、睡眠を妨げるので眠りが深くなりません。ですので、就寝の3〜4時間前には食事を終えて、消化活動がある程度終わった段階で寝ることが睡眠にとって効果的な食事方法のひとつです。

例えば、寝る前にホットミルクを飲むといいと聞きますが…どうなのでしょう。

鈴木さん

悪くはないのですが、興奮を抑えるとか気持ちを鎮静化させるような、カルシウムの効果の期待はそんなに持てません。ただ、“温かいものをゆっくり飲むという行為”が気持ちを落ち着かせたり、体温を良い状態にしてくれたり、副交感神経に良い影響をもたらします。そういう点で温かいものをホッと飲むという行為はおすすめします。

今夜からできる身体にいいことですね!では寝ている間、身体では何が行われているのでしょう。

鈴木さん

はい、疲労などの回復はもちろん「筋肉や血液(体タンパク質)の合成」が行われています。ですので、アスリートや体を鍛えている方には、就寝前の”カゼイン“の摂取を勧めます。カゼインは体タンパク質の材料です。また、身体の回復を図るためには、血液中のアミノ酸濃度を高い状態で、なおかつ長時間保たせることが必要なのですが、それができるのがカゼインなんです。

カゼイン。食品でいうと何に含まれているのでしょうか。

鈴木さん

ヨーグルトでいう下の白い個体がカゼインです。就寝の1時間前にギリシャヨーグルトや水切りヨーグルトを食べるといいですね。一般の人にも新陳代謝を高めるという意味でも就寝前のカゼイン摂取はいいかもしれません。ちなみに、上澄の液体がホエイ(乳製タンパク)といって、こちらは吸収のスピードが早く栄養価も高いので、トレーニング後にジュースなどで割って飲むといいですよ。実は捨てると勿体ない!

大塚さん

あはは、そうですね。小腹が空いて寝れないくらいだったら、一般の方にもカゼインはいいと思います! 私は起きて何を食べるかも気になりますね。とりあえず、缶コーヒーとメロンパンみたいな方多いじゃないですか。

鈴木さん

ダメダメダメ絶対やっちゃダメ、コーヒーとメロンパン!(笑)でもそういう人本当に多いんですよ。清涼飲料水と菓子パン。これって砂糖水と炭水化物ですよ!やはりタンパク質を食べないことには体温はあがらないので、朝起きて代謝のレベルを上げるためにはタンパク質を摂るべきですね。同じパンであってもハムチーズが挟まっているサンドウィッチの方がいいです。

大塚さん

夜食べすぎたから朝を抜こうとかっていう考えの人は一般の人でも多いですよね。本来夜の食べ過ぎはあまりよくないことですが、夜食べすぎたとしても、1日の起点として朝食をしっかり食べることは大切です。

水分補給をルーティンに

よく、寝ている間にコップ一杯分の汗をかくと言われていますが、水分補給という観点ではなにか気をつけることはありますか?

鈴木さん

寝ている間の水のマネジメントも大事ですよね。先程言ったように睡眠中身体は働いていますので汗はかきます。

大塚さん

それに高温多湿の日本の気候であれば、なおさら汗をかきますよね。アスリートについていえば、エアコンを使わない体調管理をしていたりするので睡眠環境は整えたいところです。

それだけ水分が放出されているということは、寝具の水分吸収も大事そうですね。

大塚さん

そうですね。寝心地の悪さは当然睡眠の質にも影響してくると思うので、そういった身体の働きにも対応してくれて快適に睡眠がとれる寝具があるといいですね。

FUTOSNTARでも、特に睡眠中の水分の吸収については素材を工夫して改善できるような布団を開発しています。ポリエステルでも、水分を吸収しやすい素材を使用したり

鈴木さん

汗を吸い取ってくれるのはいいですね。せっかく布団が機能するのに十分な水分が身体にないと元も子もありませんから、寝る前には身体にコップ1杯程度の必要な水分を摂って身体を潤してほしいです。ただその時、冷たいお水だと刺激物となって体が興奮してしまうので、常温か温かいものが好まれます。冷たすぎず熱すぎずがいいですね。また、寝起きの体もそれだけの水分が出ていった後ですから、水分の補給は行うようにしてほしいです。

特に難しいことをしなくても、適切な水分補給と汗をかいても快適に眠れるお布団、この2つがあれば、快適な眠りに近づけられますね。

鈴木さん

そうですね。ぜひ読者の方にも、日々のルーティンとして水分補給を実践していただければ嬉しいです。

鈴木先生、大塚さん、今回はありがとうございました!

私たちの身体の健康には食べたもの、そしてそれらを身体に取り込むための睡眠がいかに重要かがわかりました。また、この情報社会の中で、食事や睡眠の質やそれを取り巻く環境を選択するための知識や判断が私たちに委ねられていることがわかりましたね。このコーナーでは少しでもその判断の助けになるような知識をお伝えできればと思っております。次回もお楽しみに。

インタビュー前編はこちら

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